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電動車いすのイメージをデザインでポジティブに。WHILLが描く未来とは

電動車いすのイメージをデザインでポジティブに。WHILLが描く未来とは

医療者の方なら毎日目にする、車いす。そのイメージをがらりと変えるクールなデザインの電動車いすが、昨年発売されました。
その電動車いすの名前は「WHILL Model A(ウィル モデル エー)」。医療機器展などにも出展されているので、ご存じの医療者の方もいらっしゃるのでは?

国内の電動車いすの開発は、ヤマハやスズキといった大手が手掛けていますが、この洗練されたデザインを生み出したのは、なんと日本の若手技術者が中心となったベンチャー企業・WHILL株式会社。「かっこよくなきゃ、つくらない」というものづくりの姿勢が貫かれた車いす、WHILLの魅力と、デザインにこめられた想いをご紹介します。

乗る人をスマートにするパーソナルモビリティ

WHILLが目指しているのは、だれもが乗りたくなるパーソナルモビリティ。一般的な車いすとは大きく異なるデザインで、肘掛け、介助者用のハンドルなどがなく、シンプルな円とわずかな直線で構成された外観。乗り物好きの心をくすぐるモダンなデザインは、まさに次世代の乗り物です。

4WDを実現し、高い走破性があることも大きな特長です。振動の少ない全方向回転する前輪は、WHILL独自のもの。小回りも利き、まるで人がその場で回るように、くるりと向きを変えることができます。



お出掛けが楽しくて道に迷うほど。ユーザーの毎日を魅力的なものに変える

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デザインや機能性にこだわって作られているWHILL。当然、相当のコストや技術力が必要となります。なぜこのような追求をしているのか、プロダクトデザイン・メカニカルデザインを担当する菅野秀さんにお話しを伺いました。

Q.WHILLについて、医療者の方に伝えたいこと、知ってほしいことなどはありますか?

A. そうですね、WHILLは車いすユーザーだった方も、そうでなかった方にも乗って頂いています。
「これまでは家からまったく出なかったのが、WHILLを使うようになって週に3、4回出掛けるようになった」というコメントを頂きます。WHILLユーザーとなってから外出の頻度があがり、結果的に生活のクオリティが上がったと感じていらっしゃる方が多いようです。手動の車いすのときにはいつも決まった一本道しか通らなかった人が、どこまでいけるのか試して、最終的には道に迷うようになったりしています(笑)

「椅子に見えない車いす」を目指す

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Q.菅野さんから見たWHILLの魅力とは何ですか?

A. WHILLが大切にしているものは3つあって、まず、1つは、デザインです。「車いす」というもの自体に、ネガティブなイメージを持つ方もいらっしゃいます。電動の乗り物なら便利なはずなのに。そのネガティブなイメージをお持ちの方にも、「乗りたい」と思ってもらえるものにしたいと思っています。

実際に、これまで、外出先で「大丈夫ですか」「手伝いましょうか」などの声をかけられていたのが、WHILLに乗っている時は「どこで買ったんですか?」というようなポジティブな声掛けをされるようになりました、といううれしいお声も届いています。

2つめは、テクノロジーの精神です。WHILLの大きな特徴として、前輪にオムニホイールというものを使っています。これは24個のタイヤがひとつになっているもので、床を滑るように動きます。このオムニホイールのおかげで、他の製品が登ることができない段差や砂利道の走行が可能になっています。

タイヤが沢山ついていると、振動が大きくなるのですが、長時間車いすに乗るユーザーさんは、それだと床ずれを起こしたりします。オムニホイール自体は、歴史があるものなのですが、振動が少ないものを開発したのがWHILLの実績です。

3つめは、Bluetooth・iPhoneなどソフトウェア、IoTを取り入れた車いす開発です。開発中ですが、見守り機能などですね。IoTを使った車いすの開発は国内では稀だと思います。

Q. WHILLはどうやってデザインを決めていくのですか?

A. 他の会社とは違うアプローチかもしれません。WHILLの精神に、「かっこよくなきゃ、つくらない」というのがあるんですよ。乗りたいと思える乗り物をつくる、ということですね。

WHILLは、「椅子に見えない」デザインを目指しています。「椅子にタイヤがついている用具」ではなく、「アクティブに行動するためのモビリティ」という提案です。

車いすを使用することは、自分の身体能力が落ちたと感じてしまうユーザーさんに、これまでより快適に出かけられるモビリティがあるということを伝えたい。乗って、自慢できるような乗り物にしたいんですよね。

アメリカでは10倍くらい電動車いすが普及している

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Q.WHILLはアメリカに本社をおいています。車いすユーザーにとってアメリカと日本の違いはありますか?

A.車いすに対する考え方が全然違うんですよね。日本ではちょっと体が動くんだったら、手動の車いすの方を勧められるケースも多く、電動の車いすの普及率はすごく低いんですよ。
アメリカだと、ちょっと動けないなら、電動に乗ってQOLを高めたほうがいいですよ、という考え方なので、補助も出やすく、取り入れるのに抵抗のない人が多いです。電動車いすユーザー数も、調査によると日本の8~10倍くらいです。

世の中にもっとユーザーさんが「使いたい!」と思える製品を

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Q.WHILLが社会の中に普及していくことによって、医療・福祉の現場などにどんな影響が与えられると思いますか?

A.電動車いすは残存機能を使わなくなるので、リハビリとしてはあまりよくないとされることが多いです。僕らはそれが間違っているとは思わないんですが、これまでは自分で移動できていた人たちが、例えば自転車などに乗れなくなったときに、(電動車いすがあれば)よりアクティブな生活を送れるのではないかと思っています。

僕らはもっと、デザインにもなんらかの生活の質を変えていく力があることを、WHILLという製品で伝えていければと考えています。

WHILLの会社のビジョンには「すべての人の移動を楽しく、スマートに」というのがあるんですけど、一般の人も含めて「すべての人」なんです。将来的には一日に30台くらい、WHILLを見かける社会にするのが会社としての目標です。

「乗ってみたい車いす」が健常者と障害者の壁を取り払う

デザインの力で、ユーザーのポジティブな気持ちを引き出す車いす、WHILL。最近では旅行会社H.I.S.のツアーに利用されたり、NTTdocomoのモビリティシェア事業での活用も発表されています。障害のあるなしにかかわらず、ひとつの乗り物として、車いすを選択するという機会が今後増えてくるのではないでしょうか。

Via:WHILL

Medicatessen ライター

mochida

セレモニースタッフ兼ライター。休日は湾岸エリアでジョギング

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