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研究が進む医療と音楽の可能性。音楽はどこまで人の心に届くのか。

研究が進む医療と音楽の可能性。音楽はどこまで人の心に届くのか。

私たちの気分を盛り上げてくれたり、安らぎを与えてくれる音楽。お気に入りの曲を聴いただけで力が湧いてきた、という経験のある方も多いのではないでしょうか?思い出の音楽を耳にして、懐かしい気持ちになることもありますよね。

福祉や医療の現場では、音楽療法という形で、近年研究が進められています。軽度のうつ病の緩和や、重度知的障害者の精神発達、終末期医療の緩和ケアなどの補助的療法として利用されているのはご存知だと思います。これら以外にも、

  • 苦痛や痛みの緩和
  • 認知症患者の記憶をよみがえらせる

    など、さまざまな効果が期待されています。心身を健康にする医療の場面で、音楽の力が注目されているのです。

薬や手術では届かない「心」に響く音楽の力

A multi-ethnic group of preschool children are sitting in a circle on a mat with their teacher - they are happily playing musical instruments.

音楽療法は、精神疾患、知的障害、がん患者の緩和ケアなどに取り入れられています。主な目的は、患者が表現力を高めたり、穏やかな心理状態になることです。具体的には、

  • 知的障害を持つ子供が、ダンスや楽器演奏などで他者とのコミュニケーションをはかる
  • がん患者やHIV感染者が、家族や人生と向き合うきっかけを作る

    などが挙げられます。音楽の力によって導かれる精神的な発達やコミュニケーションの促進は、薬物投与や外科手術では得難いものといえるでしょう。
    その一方で、音楽の心地よさは経験や好みなどの影響を受けるため個人差が大きく、専門的に学んだ音楽療法士の存在も注目されています。アメリカでは、民間資格ではあるものの、BC-MT(Board Certified Music Therapist)という音楽療法の資格があります。全米音楽療法協会が承認した大学の学士号取得ののち、臨床経験を経て、試験に合格した人のみが資格取得できるというもので、日本に比べ、法整備も整っています。

音楽が不安や痛みを軽減

Portrait of an attractive female dentist and her child patient.

では、音楽はどこまで人の心理状態をコントロールしてくれるのでしょう?メキシコのある研究では、歯科治療の際の不安を、音楽で軽減できるかという実験をしています。34人の被験者を「治療前に音楽を聴かせるグループ」と「音楽なしのグループ」に分け、体温や心拍数、唾液中のコルチゾルを測定したところ、音楽を聴いたグループの方が値が低く、音楽なしのグループに比べ、不安や動揺が明らかに緩和されました。

このほかにも、英国ブルネル大学のキャサリン・ミーズ准教授が7000人を対象にした70件の臨床実験の結果、音楽の種類に関わらず、手術後の痛みが軽減されたという報告などがあり、日本でも実際に大腸内視鏡検査の際に音楽を流し、患者の不安を軽減させる試みが行われています。

認知症患者の記憶と人格を呼び戻す

senior woman making okay sign while wearing headphones to listening music

家族の顔や自分の名前さえ思い出せない重度の認知症患者が、思い出の音楽を聴くことにより、昔の記憶を取り戻し、無気力状態から一時的に回復する場合があることもわかってきました。

こちらはドキュメンタリー映画「パーソナル・ソング」特別映像の動画。94歳の男性は、俯いたまま、他人との関わりを持とうとせずに過ごしていましたが、彼が好きだったゴスペルを聴かせると、体を動かし始めました。音楽を止めた後の質問に対しては、認知症患者と思えないほどはっきりと応答しています。

患者のバックグラウンドを細かく調査し、個人の記憶に結びつく音楽を聞かせることで、認知症患者の表情や行動が変わる事例は日本でも報告されています。最近はNHKニュースで取り上げられるなど、音楽療法は認知症患者の脳機能を改善する方法としても注目されているようです。

病院で流すことを目的に作曲された音楽

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療法とまではいかなくても、病院内で音楽を利用するケースは増えて来ています。スローテンポのクラシック音楽や、オルゴールの曲などは患者さんにリラックスしてもらうほか、治療器具の音やプライバシーをともなう会話を聞こえにくくするマスキング効果もあります。また、病院自体のイメージを高めてくれる効果も期待されています。

それを受け、医療シーンでの利用を想定したCD有線放送サービスの音楽もすでに普及しつつあります。

音楽の種類は、副交感神経を活性化させるものを中心に、クラシックから波の音まで、実にさまざま。音量は極小さくてもよいそうです。CDやインターネット有線放送なら大がかりな設備がなくても気軽に試すことができますね。
心の奥に、自然と沁みこむ穏やかな音楽。クリニックの待合室や診療室などに、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。

 

Medicatessen ライター

mochida

セレモニースタッフ兼ライター。休日は湾岸エリアでジョギング

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